本丸御殿公開記念 NAKED meets 二条城2...
国内外から多くの人が訪れる京都の人気観光スポット[二条城]。城内に入ると街中から一変、雄大な歴史建築と緑豊かな庭園が広がり、春は山桜や里桜、八重紅枝垂桜など50品種約300本の多種多様な桜を楽しめる。紅葉の名所としても知られ、これからの季節はイチョウやカエデなどの多彩な木々が美しく色づく景色も見ものだ。
今回はそんな[二条城]に訪れたらチェックしておきたい基本情報から、歴史に隠された謎などちょっと変わった見どころも紹介。
写真提供/京都市元離宮二条城事務所
1601(慶長6)年5月、江戸幕府初代将軍・徳川家康の命令で造営が始まる。目的は来る征夷大将軍宣下に備え、徳川の世の到来を広く天下に示すことと、将軍上洛時の宿泊所とするため。1603年3月、家康は初めて[二条城]に入り、将軍拝賀の礼のため禁裏へ参内。諸大名をはじめ親王や公家衆、諸門跡を招き、城内で華やかな宴を催して将軍としての権威を強く印象付けた。
1605年には二代将軍・秀忠の将軍拝賀の礼で再び祝宴を開催、1614年からの大阪冬の陣・夏の陣で家康の出陣の地となるなど歴史の要所に。1620(元和6)年、秀忠とお江の王女として生まれた和子が、公武をつなぐプリンセスとして入内する際には、その出発点となった。そして1626(寛永3)年、築城以来最大のイベントが行われる。禁裏から[二条城]まで豪華絢爛な行列が繰り広げられた。秀忠は行幸を彩る舞台を整えるため修築を命じ、寛永の大改修を行った。
天下太平の時期を迎え、将軍は久しく入城することはなかったが、時代は幕末の動乱へ。約230年を経て訪れたのは14代将軍・家茂。幕臣や有力大名も足繁く登城し、政局を左右する場となった。1867(慶応3)年10月、15代将軍・慶喜が二の丸御殿で大政奉還の意思を表明。1868年、明治天皇が[二条城]へ行幸し、新体制の樹立を宣言する親征の詔を達する。ここで長く続いた武家社会が幕を閉じ、日本が近代化へと進んでいくきっかけとなった歴史舞台であるということはあまりにも有名だ。
明治政府が発足すると[二条城]は京都府庁として使われることに。その後宮内省の下で[二条離宮]と名を改め、国内外の賓客を迎える場となった。1915(大正4)年には大正天皇即位の大礼が行われ、皇族や国内要職者、外国人使節ら錚々たる顔ぶれが即位を祝う煌びやかな大饗宴の舞台となる。
時代は昭和を迎え1939(昭和14)年、宮内省から京都市に下賜され、一般公開が開始された。
1625年(寛永行幸の前年)に建てられた二の丸御殿の正門。柱より上の空間はすべて彫刻で埋め尽くされ、龍や虎といった霊獣に加え、鶴や亀、蝶、松竹梅といった長寿や繁栄を象徴するモチーフが刻まれている。建物中央の梁の上に向かい合うように彫刻されている龍と虎は城を守護する象徴として配されたもので、唐獅子は門全体で10頭見つけることができる。それぞれの彫刻の意味合いを踏まえながら探してみるのも楽しい。
また、唐破風に取り付けられている菊紋にはちょっとした秘密が潜んでいる。菊紋といえば皇室を表すシンボルだが、昭和修理時に見つかった菊紋の裏側には徳川家の葵紋の痕跡が残っていたのだ。さらに平成の大修理で、屋根を受ける垂木の小口金具には、菊紋の下に葵紋が存在するということが分かった。
将軍が京都滞在中の居館として造営され、寛永行幸の大改修で現在の姿に。入母屋造の屋根を持ち雁行形に立ち並ぶ6棟の建物に、武家風書院造で整えられた部屋の数は33。約800枚もの畳を使用し、廊下の総延長は約450mにも及ぶ。さらなる見どころは、幕府の御用絵師として、寛永行幸の大改修で殿舎を彩る絵画制作を一手に引き受けた近世日本を代表する画家集団・狩野派が手掛けた3600画を超える障壁画。二の丸御殿では、桃山様式を受け継いだ豪壮な書き方と、奥行きを排除した新しい書き方、新旧スタイルが併存しているので見比べて楽しむこともできる。
二の丸御殿最大の棟である遠侍は、来訪者がまず足を踏み入れる場所。控えの部屋として使われた一の間から三の間には猛々しい虎の絵が描かれ、威嚇するように睨みをきかせている。案内を待つ来訪者はきっと緊張したはず。
将軍が公式に大名らと対面する場であり、二の丸御殿で最も公的な大広間。大胆に描かれた松は、将軍の威厳を強調する仕掛けとなっている。一の間正面、将軍の背後となる壁面の松は、頭上で弧を描いて守護するかのような枝ぶりに。左右の松は大きく伸ばして描くことで下段から見上げる者は将軍が実際よりも遠くにいるように感じる。また、将軍が座る一の間の天井は、二重に高くした二重折上格天井になっており身分の高さを示している。
大広間からガラリと印象が変わる黒書院へ。こちらでは徳川家に近しい大名や高位の公家などが対面した。障壁画には四季折々の花木が描かれている。松も端正な印象に書き方が変化。天井は一の間のみ折上格天井で、金地の唐草模様に鳳凰を極彩色で描いた天井画が見られ、特別な格式を示している。
1953(昭和28)年に国の特別名勝に指定された池泉回遊式庭園。池に浮かぶ中島や鶴島、亀島は中国の神仙蓬莱思想に基づいて設計され、池の縁に配された多くの岩が変化に富んだ風景を生み出している。
築城時から存在していたと考えられており、寛永の大改修で小堀遠州が指揮を執り、現在の原型を作った。それまでは大広間や黒書院から眺める庭だったが、天皇のための行幸御殿が建てられたため、御殿からの眺望を意識して作庭。大広間や黒書院からは切り立った岩が多く配された武家らしい印象を受ける一方、行幸御殿からは中央と左右に置いた鏡石を芯とした柔和な光景が広がる。
丸みのある屋根が特徴的な本丸御殿は瀟洒な佇まい。1788(天明8)年の大火で先の本丸御殿が焼失し、現在の御殿は1893(明治26)年から翌年にかけて桂宮家の今出川屋敷から移築したもの。玄関、御書院、御常御殿、台所・雁の間の4棟で構成され、桂宮時代に当主が日常を過ごした御常御殿は、御座の間として使われた一の間の付書院に押し板の下に上げ下げできる通風孔が設けられているほか、欄間など凝った意匠が見られ、2階は数奇屋風の意匠が施され、庭園が一望できる。御書院は宮家の公的空間で能舞台にもなり、賓客を迎えるに相応しい装い。また、大正大礼の祝宴で使われた当時の電気設備がそのまま残る台所や、貴族の世界が広がる玄関など、見どころが満載。
さらに、こちらでも注目したいのが障壁画。幕末から明治にかけて活躍した絵師たちの作品が各部屋を彩り、四季の動植物や農村の風景など宮家ならではの優美さが作風に引き立つ。(一部非公開)
焼失や改修を重ね、時代に合わせて姿を変えてきた[二条城]やその周辺には、建築物の他によく観察したい歴史的技法や、謎が深まる不思議な見どころも潜んでいる。
<石垣の違い>
まず紹介したいのが、防御の要で城主の権威を示す存在である石垣。主に用いられる3種の技法のなかの1つ目は、外堀西北隅から東に寄った一部に残る野面積み。自然石をそのまま、あるいは割っただけで使用する積み方で、隙間に小石を詰めて強度を補う戦国時代末期の一般的な技法だ。2つ目は特に内堀に見ることができる打込接ぎ。荒く加工した石を積み上げて隙間を減らすことで強度が増し、野面積みより高く勾配が急な石垣を築くことができる。[二条城]にはこの技法が頂点に達した時期のものが残っている。3つ目は打込接ぎの技法をさらに洗練させた切込接ぎ。石垣をより隙間なく積み上げることを目指した技法だが、外観は整うものの強度では打込接ぎに劣る。西門内側の石垣の一部に見ることができるので、それぞれの違いをチェックしてみて。
また、堀川通の東を流れる石垣には、築城時に造営を任された大名の名前を示す刻印が残っている。丸に山や二重丸などユニークな印が刻まれているので、散策しながら探してみたい。
<3度傾いた二条城>
碁盤の目にように東西南北に道路が走る京都市内。そんな街中に立地する二条城も例に倣って築城されていると思いきや、実は堀川通と平行になっておらず、斜めに傾いていることはあまり知られていない。築城時に方位磁石を使ったが、磁石が示す北と真北がズレていたせいなのか、地磁気の変動によるものなのか原因ははっきりしないが、南北の軸線が東に3度傾いているのだ。東大手門がある堀川通を歩いてみると、北にいくにつれ前の広場の広さが狭くなっていくことは、意識してみないと気付かないはず。
<直線上に並ぶ3つの離宮>
京都に残る離宮と言えば[桂離宮]、[修学院離宮]、[元二条離宮(二条城)]。実はこの3つの離宮、地図上で見ると一直線上に位置しているのだ。さらには御所までもこのライン上に存在。桂離宮は後水尾天皇の叔父・八条宮智仁親王が造営を開始し、修学院離宮は後水尾天皇が自ら造営するなど、いずれも[二条城]に行幸した後水尾天皇に関わりを持つが、偶然か故意か、謎は深まるばかり。
他にも、御所や門跡寺院に見られる5本線の筋塀が[二条城]でも使われていたり、勅使の間に入り口がなかったりと、不思議な謎はあちこちに。何度訪れても新たな発見に出合える奥深さも魅力だ。
●地下鉄二条城前駅1番出口から
・徒歩すぐ
●JR二条駅から
・徒歩17分
●京都駅からバスで
B1乗り場
・9号系統(二条城・西賀茂車庫行き)→バス停「二条城前」で下車→徒歩すぐ
B2乗り場
・50号系統(立命館大学行)に乗車→バス停「二条城前」で下車→徒歩すぐ
●地下鉄烏丸四条駅からバスで
D乗り場(四条通南側)
・12号系統(金閣寺・立命館大学行)に乗車→バス停「二条城前」で下車→徒歩すぐ
●駐車場(乗用車)
・第1駐車場(二条城東側)
台数/120台 ※10月のみ54台
営業時間/8:15~16:00 ※イベント等の際は開城時間に合わせて営業時間を変更
料金/2時間まで1200円、以降1時間ごと300円
・第3駐車場(二条城南側)
台数/20台
営業時間/8:15~16:00 ※イベント等の際は開城時間に合わせて営業時間を変更
料金/2時間まで800円(※令和6年8月1日〜1000円) 、以降1時間ごと200円
●駐輪場
台数/バイク10台(大型用無し)、自転車83台
営業時間/8:15~16:00 ※イベント等の際は開城時間に合わせて営業時間を変更
料金/バイク:2時間まで400円、 以降1時間ごと200円
自転車:2時間まで200円 、以降1時間ごと100円
紅葉シーズン情報
見頃/例年11月中旬~下旬
重要文化財・二の丸御殿障壁画 原画公開
『秋期原画公開 葵から菊へ~〈白書院〉一の間・二の間』
期間/2024年10月10日(木)〜12月8日(日)
時間/9:00~16:30(最終入城16:00)
夜間特別公開(ライトアップ)『本丸御殿公開記念 NAKED meets 二条城2024‐秋の豊穣祭‐』
期間/2024年10月25日(金)〜12月8日(日)
時間/18:00~22:00(最終入場21:00)
詳細は二条城公式HPよりご確認ください。
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