花をモチーフに繊細な模様を映し出す前田麻美さん/京...
京都でものづくりをする人にスポットを当て、その想いや作品を紹介。今回は九谷焼の窯元での修業を経て、京都で独立した葛西国太郎さん。花をモチーフにしたやさしい雰囲気のうつわに心が和む。
可憐な小花が散らされたうつわに漂う、どこか懐かしい雰囲気。代表作のDAISYシリーズを始め葛西国太郎さんの作品はどれも、レトロでモダンなデザインのなかに素朴な温もりを感じられる。
「作品のイメージとして思い浮かぶのが、小さい頃家にあった古い料理本の家庭料理の写真です。垢抜けないけどかわいらしいうつわに、料理が盛られているような。家庭の幸せな空気みたいなものも、作品で表現できたら」と葛西さんは話す。
北海道で生まれた葛西さんは父もまた陶芸家であり、その背中を見て育った。それでも以前は、陶芸家になるつもりはなかったそう。「美大でグラフィックデザインを学び、その後京都の会社でデザイナーとして働いていました。雑貨が好きでよく店を巡っていたのですが、商品のうつわを見て改めて身近なものに感じて。焼き物をやってみようという思いが自然と芽生え、陶芸家になることを決めました」。
京都の陶芸専門校を卒業し大学時代を過ごした石川県に戻った葛西さんは、九谷青窯に入った。九谷焼の伝統を受け継ぎながらも独自のスタイルで作品を生み出す九谷青窯で、多くのことを学んだという。「九谷青窯ではデザインから絵付けまで一人で一つの作品を担当し、窯元としてではなく個人の名前も出してうつわを作れるので刺激になりました。現代の食卓や使う人のことを想像して作る大切さも教わり、それは今の自分の作品づくりにも大きく影響していますね」。
九谷青窯での6年の修業を経て京都で独立した葛西さんは、ブランド・HANIを立ち上げた。自分ならではの作品づくりを追求し、新ブランドでは磁器から陶器へと大きく方向転換。鮮やかな色彩よりも、落ち着いた色味の装飾を施すようになった。
「HANIの定番シリーズのDAISYはイッチンという技法を使い、白の土で立体的に花模様を描いたもの。白の釉薬を使いマットな質感に仕上げています」。葛西さんの作品で描かれる花は主張しすぎず、料理に寄り添う絶妙な存在感。葛西さんの穏やかな人柄を映したような、やわらかい雰囲気も作品の魅力のひとつだ。
去年生まれたFOLKSシリーズはシックな色合いをベースに、彫られた一輪の花が光に照らされたように美しく映る。アクセントになるこの花を活かして、どんな料理をどう盛り付けようかと悩む時間も何だか楽しい。
「今後はもう少し大人っぽいテイストの作品も作っていけたらと思っています。でもどんなシリーズでも、使う人が幸せな気持ちになるようなうつわを目指していきたいです」と葛西さん。年数回開催している展覧会は、これからも続けていくとのこと。情報はインスタグラムで随時アップされるので確認を。次はどのようなうつわで私たちを笑顔にしてくれるのか、新たな作品の誕生を心待ちにしたい。
葛西国太郎
かさいくにたろう
1977年北海道生まれ。金沢美術工芸大学デザイン科卒業後にグラフィックデザイナーとして働き、京都府立陶工高等技術専門校へ。石川県の九谷青窯で修業し、2016年に京都でブランド・HANIを始動。[HANI]の名前は土を表す埴輪の埴(はに)から由来している。
https://www.instagram.com/kasai_kunitaro/
PHOTO/高見尊裕、TEXT/板倉詠子
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