青の色彩に和む[魚雲窯]山本たろうさん/京都でうつ...
京都でものづくりをする人にスポットを当て、その想いや作品を紹介。今回は陶器に金属を施し削ることで模様を表現する[KOHAKUGAMA]の山内駿さん。山内さんのオリジナルの手法で生まれるうつわには、独創的な雰囲気が漂っている。
傍目には表面に加工が施された金属、あるいは時を経て味わい深く色あせた金属のようにも映る。そんなメタリックな風合いをまとう陶器を、独自の技法で生み出す山内駿さん。その個性的な作品には、専門学校時代に出合ったひとつのうつわが原点にあるという。
「京都で陶芸を学ぶって何かいいなって軽い気持ちで京都伝統工芸専門校に入学したので、現実とのギャップに悩み、学校を辞めることも考えていました。そんな時に授業で、国宝の油滴天目茶碗を見て、こんなかっこいいものが陶芸で作れるんだって衝撃を受けましたね」。黒地に浮かぶ銀色の油滴模様の美しい色合いや存在感のある佇まいは、当時からロックやパンクのファンで、ファッションなど普段の生活でも黒と銀を好む山内さんの心に強烈に刺さった。
「目指すうつわができたことで心機一転、陶芸と真剣に向き合うようになり、陶芸家になろうって心が決まりました」。
専門学校卒業後は陶芸家の猪飼祐一氏に弟子入りし、南丹市での3年間の住み込み修業を経て独立。東山五条で[KOHAKUGAMA]を開いた。
当時からの山内さんの代表作が、黒釉の陶器に銀を施した銀刻彩のうつわ。土と金属が融合し一体化した作品を、最初は陶器と気づかずに手にする人も多いそう。
山内さんのうつわは、まず釉薬を塗り焼成し、銀か金を一面に焼き付ける。そしてリューターなどの工具を使い、手作業で表面を削っていくという手法。削られて現れた釉薬と表面に残る銀、金で模様を作り出すのだ。
「近年の作品のテーマは、頭の片隅に残っている景色を意味する“小景”。散歩しているときや旅先で見た風景が題材です。例えば地面に落ちて重なっている松葉や水面に広がる波紋、光が生み出す影とか木漏れ日。そんな日常の何気ない景色を、模様として表現しています」。
一見クールな印象のうつわに刻まれるのは自然の風景。そしてそこに土の質感が加わり、どこか温かさが感じられるのも作品の魅力だ。
山内さんはこれまで、画家など他のジャンルのアーティストとコラボしたり、陶芸家仲間と“うつわ男子”というグループを作り幅広い世代に焼き物の魅力を伝える活動をしたり、意欲的にやりたいことを実現してきた。そしてコロナ禍の生活を通して、作品づくりにも変化が生まれたという。
「家で食事をする時間が増え、もっと食卓が楽しくなるようなものを作りたいと思うようになって」と、金や藍釉を使った鮮やかな色の新シリーズが誕生した。金を薄く塗ってピンクに仕上げたうつわは、お客さんに初めて「かわいい」と言われたと、山内さんは笑う。
「今後は原点回帰というか、陶芸家を目指すきっかけになった天目茶碗を作ってみたい。陶芸を始めてちょうど20年経った自分なりのアプローチで、新たな挑戦がしたいですね」。山内さんが次なるステージでどんな作品を生み出すのか、期待せずにはいられない。
最初の工房が589番地だったことから、[KOHAKU-GAMA]と名付けた。黒釉の陶器に銀彩を施し表面を手削りする、オリジナルの技法を用いた銀刻彩のうつわが代名詞で、最近は金彩や藍釉の作品も仲間入り。近年は、記憶の片隅に残る“小景”をテーマに制作している。京都を中心に、国内外で個展やグループ展を開催。さまざまなジャンルのアーティストとのコラボ作品も多数。
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