青の色彩に和む[魚雲窯]山本たろうさん/京都でうつ...
京都でものづくりをする人にスポットを当て、その想いや作品を紹介。今回は京都では珍しく、九谷焼の赤絵細描の作品を手掛ける種田真紀さん。伝統を継ぐ細やかな筆使いや独自の表現が注目されている。
赤の線で緻密な文様が描かれる赤絵細描。これは石川県で江戸時代から続く九谷焼の上絵技法であり、高度な職人技が生み出す世界に思わず引き込まれる。
古くから窯元が点在する今熊野の住宅街に佇む共同工房[禎山窯]で、その赤絵細描のうつわを作る種田真紀さん。種田さんの作品には伝統技の重厚感というより、親しみを覚えるようなどこか可憐な雰囲気が漂う。
種田さんは岐阜県出身で、大学卒業後に名古屋の百貨店に勤務していたという異色の経歴の持ち主。現在のような陶芸作家になる最初のきっかけは、京都への旅行だったそう。
「手に職をつけたいという気持ちが芽生えていたとき、たまたま訪れた京都伝統工芸館で工芸を学べる学校があることを知りました。それで数年後に仕事を辞めて京都に移り、京都伝統工芸大学校に入学したのです」と種田さん。赤絵細描との出合いは、学校のデザインの授業だったという。「描かれた文様がすごくかわいく見えて、一目惚れでしたね。それで石川県の窯元に足を運び、赤絵細描の伝統を受け継ぐ山本芳岳先生に弟子入りして技法を学びました」。
種田さんは5年間の修業後に独立。京都に戻り、縁があって現在の共同工房である[禎山窯]に入った。弁柄と呼ばれる鉄分を含んだ赤の顔料を使い、極細の筆で髪の毛よりも細い線をミリ単位以下の間隔で描く様子は見事というほかない。
「赤絵細描は香炉や大皿の飾り皿といった作品が多く普段使いするようなものが少ないのですが、私が目指すのは日常で使えるうつわ。“かわいい”と思ってもらえたら嬉しいです」と種田さん。古典柄に独自のアレンジを加えたり描き込みすぎずに余白を活かしたり、現代の生活に合ったデザインを意識しているそう。直線や曲線を組み合わせて生まれる華文や雪文が種田さんの代名詞で、完成された美しさのなかに手描きならではの温かみも宿る。
「赤絵細描を初めて見る人には作風の違いが伝わりにくく、個性を出すのが難しい。でもこの文様は私の作品だとわかってもらえるかな」と話す。種田さんの作品は小皿や豆皿が多いのも特徴で、サイズ感でもかわいらしさ、使いやすさを重視しているといい、女性を中心に若い世代も魅了している。
現在は年に数回個展やグループ展を開催するなど、精力的に活動しながら赤絵細描の技法を磨いている種田さん。
「今年は百貨店の美術工芸サロンでも展示会が決まっており、一点ものの大きな作品にも力を入れたいと思っています。かわいらしい文様だけでなく龍を描くなど、題材の幅も広げていければ」と話す。
「いつかは自分の工房を持つのも目標ですね。場所は京都か実家のある岐阜かまだわかりませんが、今後も自分らしさを感じられるような作品を手掛けていきたいです」。作品のファンも見守る種田さんの次なる展開を楽しみにしたい。
初代が九谷焼の前田藩御用窯の窯主だったという[禎山窯]。京都で四代目となる現在の当主は川尻潤さんで、日本独自の美意識を表現した現代的な作品に注目が集まる。共同窯を主宰しており、種田真紀さんは2013年から所属している。日本人をはじめ中国人やメキシコ人といった多国籍の作家が集まり、作風もさまざま。川尻潤さんによる陶芸教室も開催。
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