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京都でものづくりをする人にスポットを当て、その思いや作品を紹介する新連載がスタート。初回は宇治の山里で作陶する山本たろうさん。窯元を訪ね、作品が生まれるまでのストーリーや込められた思いをうかがいました。
鮮やかな色合いにも趣を感じられるトルコブルーの釉薬。そして民藝の精神が宿るしのぎ技法の文様。この2つを代名詞として作品に織り込み、独自のうつわを作陶する山本たろうさん。山本さんの工房は宇治の中心部から山道を登った先に現れる静かな里・炭山にある。炭山は約50年前に京焼・清水焼の陶工たちが移り住み生まれたという工芸村だ。
「父は当時五条坂界隈から移った陶芸家のひとりで、ここで魚雲窯を開きました。生まれたときから陶芸は身近な存在でしたが、最初からそこを目指していたわけではなくて。高校卒業後に改めてものづくりっていいなと思って、陶芸の道を志したのです」と山本さん。
魚雲窯では父と母、姉とともに作陶しているものの、その作風はバラバラ。親から子への継承にこだわらず、お互いの自由な表現を尊重していることが伝わってくる。それでも「目指すのは日用食器。父のうつわを毎日の食卓で使ってきたので、自分も気軽に使って喜んでもらえるうつわを作れれば」と、父の作品あってこそ芽生えた思いものぞかせる。
山本さんは京都の専門学校でろくろを使った陶磁器の成形、釉薬をそれぞれ一年ずつ学ぶなどし、沖縄の読谷村焼の窯元で二年ほど修業を積んだ。
トルコブルーの色彩も、生地の表面に溝を彫り稜線文様を作るしのぎも、沖縄での経験が大きく影響しているそう。「トルコブルーは沖縄で印象的だった海や空の美しい色からイメージしたもの。しのぎは修業した窯元で使われていた手法です。しのぎの文様を施すことでうつわに表情が生まれ、立体感が出てくるのが魅力ですね」。
また山本さんの作品は陶器と磁器が両方あるのも特徴。粘土や製造工程が異なるこの2つを、一人の作家が手掛けることは珍しいことだという。「作品によって陶器と磁器それぞれの良さを活かしています。例えばトルコブルーのうつわはトルコ釉と赤土の組み合わせに、陶器ならではの質感が風合いを加えます。しのぎは表面を削るため、強度の高い磁器だと薄い生地でも作ることができるのです」。
「これは飲食店さんとのコラボで生まれた作品。和菓子を乗せるうつわでした。余白も味わって欲しかったので、少し大きめのサイズに仕上げています」と山本さんが手に取るのは、15cm×15cmのトルコ釉角皿。うつわの一部には釉薬を付けず、素地の赤土を見せている。
「料理をのせたときに一枚の絵が完成するようなイメージですね。これからも料理ありきでうつわを作るような試みをしていきたいです」。
また今後は陶土にする土を自分で掘ったり薪窯で焼いたり、新しいことにも挑戦したいという。「あくまで使ってこそのうつわという思いはぶれずに。私のうつわで食事を楽しんでもらえたら嬉しいです」。
1969年に陶芸家・山本重行さんが宇治の炭山に開いた窯元。魚など生き物を題材とした作品が多いことが名の由来。工房に併設したギャラリーには重行さんの作品とともに、家族がそれぞれ手掛けた作品が並ぶ。妻の陽子さんは山の草花のモチーフ、息子のたろうさんはトルコブルーの色彩やしのぎ技法、娘の薫さんはタタラ作りと色絵が特徴で、一目でわかる作風の違いがおもしろい。
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