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【滋賀の酒蔵を訪ねる①】[平井商店]/大津
日本一の湖・琵琶湖を中心に平野部が広がり、その周りの山々からの伏流水が今でも多くの酒蔵の仕込み水となっている滋賀。個性豊かな酒蔵と日本酒造りへの思いに注目する。第14回目は豊かなこの土地が醸す、たおやかな酒と200年続く想いを後世へつなぐ九代目がいる東近江市の[喜多酒造]をたずねた。
創業は1820年。およそ200年、[喜多酒造]はまろやかな地下水が豊かに湧くこの地で酒を造ってきた。たおやかな風味の酒の名は「喜楽長」。喜び、楽しみ、長生き―。幸せを象徴するようなこの酒をいま造るのは、ここで生まれ育った九代目、喜多麻優子さんだ。
3人兄弟の真ん中で、蔵を継ぐと決めたのは、中学生のとき。「普段はやさしい杜氏さんが蔵に入ると顔つきがピリッと変わって、酒と向き合う。それはまるで神事のように厳かでした。この環境を残したい、残さなくてはと思ったんです」。大学で経済学を学び、醸造関係や酒の卸の会社で経験を積んだ。すべては蔵元として[喜多酒造]を後世に残すためだ。
2015年に家業に入った。当時はまだ杜氏が来て、蔵人たちも半年間泊まり込みで酒を造っていた。「私も蔵人として冬の間は酒を造って、夏には営業をしていました。酒造りを勉強してから蔵元になろうと思ってやっていたのですが、どんどん酒造りのウエイトが大きくなって、4年前から杜氏もするようになりました」。
「そのとき滋賀県で女性杜氏は2人しかいませんでしたので、『女性らしいお酒を』『若い女性向けのお酒を』というような声を周囲からいただきました。それはとてもありがたかった反面、“女性らしい”って何だろうと。皆さんのご期待と自分が造りたい酒との間で悩んだ時期もありました」と振り返る。
「喜楽長」という酒を受け継ぐにあたって、守るべきものと、加えるべき新しい要素とは何かともがいた結果、その答えは「喜楽長」の中にあることに気付く。
「“たおやかさ”と呼んでいるのですが、『喜楽長』が持つやわらかい味をテーマにしています。それを“女性らしさ”と感じる人がいるかもしれませんね。でもそれは私が蔵に入って急に現れた特徴ではなく、父が造っていたときから『喜楽長』はやわらかく、たおやかだった。何も変わっていない。ただそのことを表現するようになっただけなんです」。
一年、一年、経験を積み重ねてできる麻優子さんらしい「喜楽長」の味。同じように八人の先人たちもこの場所で模索を続けてきたに違いない。その200年の歴史の延長線上に麻優子さんがいる。
シルバーにピンクのラインで女性のイラストが描かれたラベルが目を引く。麻優子さんが企画した「喜楽長first」という酒だ。テーマは“日本酒とのはじめての出会い”。「綿菓子みたいな淡い味わいに仕上げています。ラベルのデザインにもその雰囲気を表しました」。
喜楽長 first 純米吟醸720ml/1650円
さらに今年は「喜楽長second」も造った。[喜多酒造]では使ったことがなかった白麹と滋賀県オリジナルの酵母、二つの新しいチャレンジで醸した酒だ。「『喜楽長』のお酒は、初めての人にはちょっと本格的すぎて、とっつきにくいかもしれません。だからfirstでは初めての人が飲みやすく、『喜楽長』の良さが感じられる味わいにしました。とは言え水も米も、いつも使っている材料で、着地点を変えただけ。firstやsecondを飲んで美味しいと思ってもらえたら、他の『喜楽長』にも手を伸ばして欲しいです」。
「初めて『喜楽長』を飲む人向けの酒」、「新しいことを2つ取り入れた酒」。何か制約があったほうが、麻優子さんには力がわく。これまでそうしてきたように、杜氏を迎えて喜多家は蔵元として経営を担うという選択肢もあった。
しかし、昔から先祖が住んできたこの土地で、昔から使われてきた蔵で、昔ながらのやり方を残しつつ自ら「喜楽長」を守ることに麻優子さんはこだわった。「不自由さを許容することに意味があると思っているんです。もちろん、変えていくこともあります。
以前のように半年間泊まり込みで酒を造るようなやり方は現代には合いません。この古い広い蔵をやめてコンパクトな蔵を建てて四季醸造にすることだって悪いことではない。でもそれは、私が継ぎたいと思った[喜多酒造]ではないんです。神聖さが宿るこの場所で『喜楽長』を造ることに、私がやる意味がきっとある」。とにかくここで続けていく。その強い決意が揺るがないのは、幼い頃に見た神聖な酒造りの光景が今も目に焼き付いているからだ。
[喜多酒造]専務取締役・喜多麻優子さん。1989年生まれ。中学生で[喜多酒造]を継ごうと決意。8年前に家業に入り、4年ほど前から杜氏を務める。蔵元として若い蔵人が働きやすい環境を整えるのが今の課題
喜楽長 純米大吟醸 愛おし 720ml/4180円は、 少し甘めの椀物に合うような深い旨みと酸味。舌の上で奥行きのある味わいを感じられる。おすすめは冷
喜楽長 大吟醸 敬いし 720ml/4070円は、口に含むと、しっとりと華やかな吟醸香がより一層広がる。上品な甘みのあるタイプは冷で
喜楽長 辛口 純米吟醸 720ml/1705円は、30年以上前からある看板商品で関西らしい超辛口。甘みを抑え麹本来の旨みを堪能できる。冷でも燗でもOK
喜楽長 純米吟醸 720ml/1485円は、やわらかい旨みと程良い酸味が見事に調和した一本。冷または、ぬる燗で。穏やかな吟醸香が食中酒に最適
喜楽長 first 純米吟醸 720ml/1650円は、日本酒の繊細さはそのままに、透明感のある香りと淡い味わいが最初の1本にぴったり。冷でどうぞ
■滋賀県
[こいずみ]0748-23-2666/滋賀県東近江市青葉町228-5
[志賀熊商店]0748-23-3028/滋賀県東近江市札の辻1丁目5-7
[大桝屋]0748-27-0014/滋賀県東近江市山上町447
■京都府
[高間酒店]075-721-7210/京都府京都市北区上賀茂畔勝町2
[名酒館タキモト]075-341-9111/京都府京都市下京区六条通高倉東入る
[にしむら酒店]075-781-3049/京都府京都市左京区北白川久保田町3
トロリとしたタレが絡んだ鰻はごはんの間にも挟まっている。鰻重上ダブル4070円 (肝吸い付き)、テイクアウトの場合は3996円
搾りたて牛乳をたっぷり使ったミルク、最高級の朝宮茶を使用した抹茶など約20種が常時揃う。ジェラートミニカップ各375円
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