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2023.8.20
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松瀬酒造前の田んぼ

竜王の[松瀬酒造]を訪ねてみた/滋賀・びわ湖の酒蔵を訪ねる

日本一の湖・琵琶湖を中心に平野部が広がり、その周りの山々からの伏流水が今でも多くの酒蔵の仕込み水となっている滋賀。個性豊かな酒蔵と日本酒造りへの思いに注目する。第12回目は穏やかな土地と人が醸し出す竜王のローカリティをそのまま酒にする蒲生郡竜王町の[松瀬酒造]をたずねた。

1.22 歳で酒蔵で働き始め、早くも29 歳で杜氏に

今年で約25シーズン目の酒造りという[松瀬酒造]の杜氏・石田敬三さん。「大学卒業してすぐここに来てるので、他の仕事も、他の職場も知らないんですよ」と、[松瀬酒造]ひと筋。こちらの製造に入った初めての社員が石田さんだった。
「入社した当時は能登から来た杜氏たちと半年間泊まり込んで酒造りしてました」。

松瀬酒造の杜氏・石田さん

7年ほどして杜氏が引退。石田さんが社員杜氏となった。「当時、僕は能登杜氏組合で最年少の杜氏でした。前杜氏からそのまま職人さんを引き継いだので、僕に変わっても作業自体は問題なかったんですが、いきなり29歳の自分が、年上の職人たちをまとめなあかんって…それが結構大変でしたね」と苦笑いで振り返る。
「松の司」の銘柄で知られる[松瀬酒造]。1860年に創業した歴史ある酒蔵で、現社長は六代目になる。その酒造りのキーワードは“ローカリティ”だ。「この蔵で酒を造っている僕たちと、地域で米を作っている農家の人。その共有している雰囲気、この竜王の地域性を素直にお酒にしようと思ってやっています。僕らは加工業者ですから、この土地の持つローカリティをゆがめず、きれいに出す。僕らの色を付けないことが大切なんです」。

2.米を栽培した地区の名前をラベルに

竜王のローカリティとは? と聞くと、「こののんびりした田園風景がすべて。僕は京都の南区で育って、酒蔵とも農業とも縁のない暮らしをしてきました。だから余計に感じるのかもしれません」と石田さん。
この風景から生み出される米は「松の司」の命。使用している酒米は、ほとんどが竜王町の契約農家で栽培されている(2割ほどは兵庫県産を使用)。しかも地域のなかでも、さらに細かい地域性が米には出ると言う。

松瀬酒造前の田んぼ

「品種が同じでも、場所によって味が違うんです。町内には、砂地もあれば粘土もあって、赤土もある。粘土に川の砂がどれくらい混じるかによっても、微妙に米が変わります。そんなことを農家の人は普通に話してるんですよ。それってすごいと思いません?」。その究極のローカリティを味わう酒があると見せてくれたのが、『橋本』『弓削』『山中』『駕輿丁』と入ったラベル。米がとれた竜王町内の地区の名前が入った、土壌別仕込みだ。「酒米はすべて山田錦です。実は酵母や発酵の経過などを揃えているので、出来あがった酒の味は同じです。でも米の中のデンプンが違うので舌触りが違いますよ」。地域にこだわる[松瀬酒造]ならではの一本。米農家への敬意も溢れる酒だ。

3.憧れの味を追っても美味しい酒にならない

酒にローカリティを出すために石田さんが心掛けているのは、「自分を出さないこと」だとも。
「お酒って生活必需品ではなく、そこにプラスαするもの。だからできるだけニュートラルな存在にしたい。その上で自然と出るのがテクニックや個性じゃないかと。今、瞬間的に『こんな酒が飲みたい』と思って造っても、きっとそれは裏目に出ると思うんですよ。お酒には自我を出さない、キャラ付けしないようにしてます」。

松瀬酒造の蔵の中

こう話す石田さんだが、実は静岡県のある酒に憧れていた時代もあるのだそう。
「会社に入ったときは、『ああいうお酒を造りたい』と思って、『ああした方がいい』『こうした方がいい』なんて考えていました。でもそれは別の酒の方向性なんですよ。憧れの酒に寄せていこうと思ってやっても、むしろどんどん離れていく。その酒からも、自分の好みからも。「松の司」の良さもない。もともと個性ってすでにあるんですよ。ここの土でできる米と、ここから湧く水。だからそれに合う仕立てをするのがいいって今は気づきました」。

試行錯誤を重ねて見えてきた竜王のローカリティ。
その味わいとは‥?
「繊細できれい…とは違いますね。それだと近寄りがたいし、なんかちょっと危ういでしょ。ここは温かみがあって、ふんわりしてて、実体感がある。悪く言えば野暮ったいかもしれない(笑)。でも安心感がある、そんな酒です」。

蔵の周囲に広がる一面の田んぼ。地域の土と水で育ち、風と太陽を受けた稲は、穏やかに時間が過ぎるこの地のローカリティそのもの。秋になればそれを農家から石田さんたちが引き継いで、素直に酒にする。それが「松の司」の酒造りなのだ。

松瀬酒造の杜氏・石田さん

杜氏・石田敬三さん/1978年、京都市生まれ。高知大学農学部卒業。周囲に酒蔵関係者はいなかったが、中学時代からの憧れの職業が酒造りだった。大学卒業後、念願の酒蔵に就職して約25年

4.一度は飲みたい[松瀬酒造]のお酒コレクション

松瀬酒造の松の司 純米大吟醸 AZOLLA50

松の司 純米大吟醸 AZOLLA50 720ml 2750円/米の香りとタイトな質感、生酛のやわらかさを融合。自然のエネルギーを詰め込んだ酒は冷がおすすめ

松瀬酒造の松の司 純米大吟醸 竜王山田錦[土壌別仕込]橋本

松の司 純米大吟醸 竜王山田錦[土壌別仕込]橋本 720ml 2475円/粘土と砂利をバランスよく含んだ、竜王町橋本地区で栽培された山田錦を使用。冷がおすすめ

松瀬酒造の松の司 純米吟醸 楽

松の司 純米吟醸 楽 720ml 1650円/やさしい香りと穏やかな甘みをたたえた酒。日本酒らしい米のニュアンスが感じられる一本は冷から熱燗まで

松瀬酒造の松の司 純米吟醸 みずき

松の司 純米吟醸 みずき 720ml 1936円/仕込みには別の井戸水を使用。やわらかい仕込水の個性がクリアな甘みと酸みを醸し出す季節限定の酒

松瀬酒造の松の司 生酛純米酒

松の司 生酛純米酒 720ml 1485円/自然な旨みと程良い酸味、そしてキレを楽しめる酒。生酛らしい風味を堪能できる

5.[松瀬酒造]のお酒が買えるところ

■滋賀県
[かねなか酒店]0749-62-0471/滋賀県長浜市元浜町33-5
[ワインセラー銀座 ヤマガタヤ]0749-22-1308/滋賀県彦根市銀座町6-7
[日本の地酒・世界の銘酒 こいずみ]0748-23-2666/滋賀県東近江市青葉町3-6
[大桝屋]0748-27-0014/滋賀県東近江市山上447
[酒のさかえや]0748-33-3311/滋賀県近江八幡市為心町上5
[小西酒店]0748-37-7422/滋賀県近江八幡市上田町1511
[馬場酒店]0748-37-0279/滋賀県近江八幡市千僧供町164
[松瀬酒店]0748-57-0104/滋賀県蒲生郡竜王町林809
[村井酒店]0748-57-0402/滋賀県蒲生郡竜王町島34-4
[リカーズ・サンク]0748-52-0221/滋賀県蒲生郡日野町内池486-5
[鷲田酒店]077-582-2153/滋賀県守山市中町118
[きただ酒店]077-552-8070/滋賀県栗東市北中小路3
[十四代 金澤]077-562-0038/滋賀県草津市追分8丁目16-14
[徳地酒店]077-565-0070/滋賀県草津市下笠町526-3
[徳地酒店 湖南店]0748-76-3392/滋賀県湖南市吉永370
[よしの]077-537-1901/滋賀県大津市松原町18-19
[中島酒店]0748-42-0221/滋賀県東近江市垣見751-2

■京都府
[地酒とワインの専門店 マルマン]0774-52-3582/京都府城陽市寺田北山田92-4
[きたむら酒食品店]075-982-8935/京都府八幡市八幡柿ケ谷14-111
[津之喜酒舗]075-221-2441/京都府京都市中京区富小路通東入ル東魚屋町194
[酒のやまもと 京都店]075-761-0124/京都府京都市左京区川端通三条上ル法林寺門前町36-3
[小松藤]075-871-0138/京都府京都市右京区嵯峨釈迦堂大門町34

6.蔵元さんおすすめ!ご近所の美味しいアテ①[湖華舞 本店]

湖華舞 本店のツツー

ツツー1450円は[松瀬酒造]の「松の司」を使って熟成を進めた日本酒ウォッシュのチーズで、個性的な香りが特徴。もっちりとしたソフトな歯触りが定評だ

湖華舞 本店

  • こかぶ ほんてん
  • 滋賀県蒲生郡竜王町小口不動前1183-1
  • JR「篠原駅」から車で12分
  • Tel.0748ー58ー2040

7.蔵元さんおすすめ!ご近所の美味しいアテ②[近江牛 毛利志満 近江八幡店]

近江牛 毛利志満 近江八幡店の牛肉炙り焼き

牛肉の炙り焼き(100g)2160円は、ロースのかぶりなどの表面を炙ってから特製のニンニク醤油タレに漬け込んだ一品。口に入れると肉の旨みと香ばしい風味が広がる。写真は約700g

近江牛 毛利志満 近江八幡店

  • おうみうし もりしま おうみはちまんてん
  • 滋賀県近江八幡市東川町866-1
  • 名神高速「竜王IC」から車で10分
  • Tel.0748-37-4325

8.[松瀬酒造]の店舗情報

松瀬酒造の暖簾

松瀬酒造

  • まつせしゅぞう
  • 滋賀県蒲生郡竜王町弓削475
  • バス停「信濃口」から徒歩9分
    名神高速「竜王IC」から車で10分
  • Tel.0748-58-0009
  • 8:00~17:00(店頭販売はしていない)
  • 土・日曜、祝日休
  • 駐車場無
  • http://www.matsunotsukasa.com/
  • PHOTO/高見尊裕、TEXT/瓜生朋美
※予告なく記載されている事項が変更されることがありますので、予めご了承ください。
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