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2022.6.22
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【滋賀の酒蔵を訪ねる⑥】[藤本酒造]/甲賀

日本一の湖・琵琶湖を中心に平野部が広がり、その周りの山々からの伏流水が今でも多くの酒蔵の仕込み水となっている滋賀。個性豊かな酒蔵と日本酒造りへの思いに注目する。第6回目は、神が導いた水でつくる“すごい”酒、甲賀市水口にある[藤本酒造]をたずねた。

1.歴史を絶やさないため、19歳で酒蔵へ養子に

甲賀市水口の田園風景に立つ建物の壁面に書かれた「神開」と「大自然」の大きな文字。「神開」は江戸時代から250年以上この地で酒造りをしている [藤本酒造]の代表銘柄だ。

“神が開いた”という名の由縁は明和3(1766)年頃にさかのぼる。酒の出来栄えに悩んだ当時の人々が近くの山村神社の御神託を受けて井戸を掘ったところ、良質な水が湧き出て、良い酒が造れるようになったという。藤本酒造の敷地内にあるその井戸の水は、現在も酒の仕込みに使われている。

「甘みのあるやわらかい味の水です。藤本酒造はこの水を使って、しっかり、そしてどっしりとした日本酒らしい味わいの酒を造り続けてきました」。そう話す代表取締役の藤本信行さんは奈良県出身。この蔵へ来たのは19歳のときだ。

「もともとは叔父と叔母が営んでいた蔵でしたが、後継ぎがいないということで私に話がありまして……。200年以上続いていると聞いて、ここで潰していいのかと悩みました。創業も難しいでしょうけれど、続けていくのはさらに難しいですから」。未成年で、酒を飲んだこともなかった藤本さん。しかも小学校教諭を目指して大学に通っていた。だが、「面白そう」という直感が、酒造りの道へ背中を押した。あらたに農業大学に進学し直し、醸造を学んだ。

2.室町時代や平安時代の製法にもチャレンジ

酒蔵を継ぎ、5年ほど前からは蔵元杜氏として自分の酒を追求している。「今となっては天職」というほど、酒造りに夢中だ。
「19歳で酒蔵に入り、勉強を重ねているとき感じていたのは『自分だったら…』という思いです。今、それを一つひとつ形にしています。多分滋賀で一番変わった酒を造っていると思いますよ」。ラインナップを見ると、確かにバラエティに富んでいる。

例えば、室町時代に生まれた「水酛」という製法で造った酒は、甘酸っぱい乳製飲料のような味がする。通常は米を蒸して造るが、この酒は生米から仕込むのが特徴だ。蒸さずに一週間、25度で置いておいて、乳酸菌を呼び込んだ米を使う。このほか、仕込みに酒を使う貴醸酒も
ある。これは平安時代の製法でアイスワインのような甘みがあるという。
「いよいよ自分で造ることになって、周りにほんまに大丈夫かって言われました。そこで、こんなに変わったのも造れます! とやってきたら、変わった酒ばっかりになりました(笑)」。

3.たった1人でもいいから絶賛される味を

現在、品揃えの三割程度が“変わった酒”。藤本さんもそれらが「万人受けはしない」ことは承知の上。それでも造り続けるには藤本さんの信念がある。
「10人中9人が旨いと思うより、10人のうち1人だけめっちゃ旨いって言ってくれるそんな酒が造りたいんです。“旨い”より“すごい”を目指しています。グレープフルーツの味、バナナシェイクのような味の酒とかもありますよ。とにかくまずやってみるというのが私のスタンスです。最近では、『今度は神開で何するの?』というようなお声をお客様からいただくようにもなりました」。

大津絵をあしらったラベルなど、「滋賀らしさ」も藤本酒造らしさ。それは米へのこだわりにもうかがえる。ほとんど滋賀県産の米を使用し、今年からは蔵のある水口で、優秀な酒米で知られる山田錦の栽培にも着手した。「蔵の周りは田んぼだらけ。目に見えるところで作った米で酒を仕込みたいと思って、農家の方に栽培をお願いしています。これだけお米の生産が盛んですから、良い酒米ができると思います。うちも田んぼがあるので、ゆくゆくは自分でも米を作りたいと思ってます」。

神に導かれた水と滋賀の米。そして藤本さんのチャレンジ精神。伝統の酒造りにユニークさがプラスされて、ますます“すごい”酒を生み出し続ける酒蔵にこれからも注目したい。

4.一度は飲みたい[藤本酒造]のお酒コレクション

神開 特別純米 大自然神開 720ml 1155円/70年ほど前から造っている純米酒。以前よりはやや味を変えて軽い飲み口に。冷~燗で。通年販売

神開 純米大吟醸 みやの四季 720ml 3300円/職人の繊細な技が活きた純米大吟醸無濾過原酒。芳醇な吟醸香と深い味わいが特徴。冷で。通年販売

神開 長期熟成古酒仕込 うめ酒 500ml 1320円/10年以上熟成した日本酒の古酒を使用。爽やかな酸味、そして青梅の風味と古酒のコクを感じる。冷で。通年販売

神開 純米吟醸 ココメロ&リモーネ 720ml 1540円/イタリアではスイカにレモンをかけて食べるそう。そんな爽やかさをまとったネーミング。冷で。夏期限定

神開 水酛伍号 720ml 1540円/生米で仕込む、室町時代の製法で造った日本酒。乳酸飲料のような甘みと酸味。冷で。通年販売

5.[藤本酒造]のお酒が買えるところ

■滋賀県
[小川酒店]077-524-2203/滋賀県大津市浜大津2丁目1ー31
[加藤酒店]077-522-4546/滋賀県大津市木下町13-1
[タカツ酒店]077-563-0650/滋賀県草津市野村1丁目18-2
[大桝屋]0748-27-0014/滋賀県東近江市山上町447
[中川酒店]0748-83-0388/滋賀県甲賀市信楽町宮町605

■京都府
[津之喜酒舗] 075-221-2441/京都府京都市中京区富小路東入ル東魚屋町194
[にしむら酒店]0120-678-910/京都府京都市左京区北白川久保田町3
[西本酒店]075-221-0452/京都府京都市中京区姉小路通西洞院西入宮木町480
[浅野日本酒店KYOTO]075-748-6641/京都府京都市南区西九条鳥居口町1 イオンモールKYOTO Sakura館1F
[上田酒店]075-781-5265/京都府京都市左京区山端川原町7

6.藤本さんおすすめ!ご近所の美味しいアテ①[漁師の店 川田商店]

飴色の艶をまとったあゆの佃煮。程良い甘みに食べ始めると箸が止まらない。小パック500円、大パック1000円。

[漁師の店 川田商店]のうろりの佃煮

うろりの佃煮。そのままつまんでも、豆腐やごはんにかけて食べても。地域によっては「ごり」と呼ばれることも。小パック500円、大パック1000円

滋賀県の郷土料理、えび豆佃煮。水深80mから水揚げした身の締まったすじ海老を使用している。小パック500円、大パック1000円。

漁師の店 川田商店

  • りょうしのみせ かわたしょうてん
  • 滋賀県近江八幡市長命寺48-20
  • JR「近江八幡駅」から車で約15分
    名神「竜王IC」から車で約23分
  • Tel.0748-32-3140
  • 8:00~18:00

7.藤本さんおすすめ!ご近所の美味しいアテ②[種新]

[種新]の口どけほろりん

4つの味が楽しめる口どけほろりん。できるだけ地元の素材をと滋賀県南部の滋賀羽二重餅を使っている。各種330円

種新

  • たねしん
  • Tel.0748-65-2533
  • 販売店/
    ・[花野果市水口店]
    滋賀県甲賀市水口町水口6111-1
    ・[ここぴあ]
    滋賀県湖南市岩根4528-1

8.[藤本酒造]の詳細情報

藤本酒造

  • ふじもとしゅぞう
  • 滋賀県甲賀市水口町伴中山696
  • JR「三雲駅」から車で約10分
    名神「竜王IC」から車で約15分

  • Tel.0748-62-0410
  • 9:00~17:00
  • 土・日曜、祝日休
  • 駐車場10台
  • http://f-shinkai.com/
  • PHOTO/高見尊裕、TEXT/瓜生朋美
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