青の色彩に和む[魚雲窯]山本たろうさん/京都でうつ...
京都でものづくりをする人にスポットを当て、その想いや作品を紹介。今回は夫婦で作陶する涌波蘇嶐さんとまどかさん。異なる窯業地の出身だからこそ生まれたうつわには、家族の物語がありました。
爽やかでやさしい色合い、モダンなデザインが印象的なうつわが並ぶここは、蘇嶐窯の工房兼ギャラリー。蘇嶐窯は京焼・清水焼の窯元の四代目涌波蘇嶐さんと、福岡の小石原焼の窯元出身であるまどかさんの夫婦2人で立ち上げたオリジナルブランドだ。
「私の祖父である初代涌波蘇嶐は京焼青磁の第一人者の初代諏訪蘇山氏に弟子入りし、青磁の技術を学びました。そこから父、母に受け継がれ、私は17年前に四代目を襲名。後を継ぐかはすごく悩んだのですが、青磁の美しい青の色を途絶えさせたくないという思いが強く、大学卒業後に陶芸の専門学校に通い始めました」と蘇嶐さん。その学校で出会ったのが、まどかさんだという。
「私は十四代続く小石原焼の窯元に生まれ、後を継ぐ気でいました。この先福岡を離れることもないからと、京都の学校に行ったのですが…」とまどかさんは笑う。
学校卒業後すぐに二人は結婚。蘇嶐さんは初代の祖父が表現した美しい青を目指しながら青磁に取り組み、作品は茶道具がメインだった。「それだけで生計を立てるのが厳しく、バイトの掛け持ちもしていました。そんなとき、当時小学校低学年だった息子が五代目を継ぎたいと言ってくれたのです。これはちゃんとバトンを渡す形を整えないとなと、息子の言葉でスイッチが入りました」とまどかさん。
そこから将来を見据え、仕事のやり方を変えていくことを夫婦で決意。二人が京焼・清水焼と小石原焼という異なる窯業地の出身であることを武器に、二つの窯元の技が融合したブランド・蘇嶐窯を立ち上げた。
「普段使いのイメージのない青磁をどうやって食器として提案するのか、一からの挑戦でした。うちで代々受け継ぐのは、磁土に顔料を混ぜ込む“練り込み青磁”と呼ばれる手法で表現した深みのある青色。そこに小石原焼の技法である飛鉋(とびかんな)を掛け合わせ、新しいうつわを完成させました」と蘇嶐さん。
ろくろを回しながら鉋の刃先を用いて生地に連続した削り目をつけていく飛鉋は独特の幾何学的な文様で、青磁に表情が生まれた。高貴なイメージのある青磁と民藝のうつわの手法である飛鉋の組み合わせは、全国でもここだけ。
親しみやすい雰囲気のうつわになり青磁の新たな魅力が広がったと、二人は声を揃える。
蘇嶐窯が誕生して今年で7年。これまで商品の開発と共に海外販路の開拓やセラミックジュエリー部門の立ち上げ、異業種とのコラボなど、数々の取り組みでうつわの可能性を広げてきた。
「四年前には工房を改装し、工房とギャラリーが共存する空間になりました。ものづくりの背景も伝えたくて、実際に作っているところを見ていただけます」とまどかさん。
二つ並ぶろくろは、片方があぐらをかいて右回転でろくろを回す蘇嶐さんの京都式、もう片方がイスに座って左回転でろくろを回すまどかさんの福岡式なのだそう。手法の違いとともに、二つの窯元から生まれたうつわに込められたストーリーも感じたい。
青磁を手掛ける京焼・清水焼の窯元の四代目涌波蘇嶐さんと、福岡の小石原焼の窯元出身であるまどかさんの夫婦2人の陶芸家によるブランド。顔料を生地に混ぜ込んだ“練り込み青磁”に小石原焼の飛鉋を施すなど2つの窯元の技法を組み合わせ、機能性と美しさを兼ね備えたうつわを目指す。土偶などをモチーフにした縄文シリーズやセラミックジュエリーなど幅広い作品で魅了。
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