王道から大人の味わいまで![ホテル日航プリンセス京...
江戸時代末から千客万来、金運招福にご利益があるとして、暮らしの中に息づいてきた縁起物の「招き猫」。
右手をあげているもの、左手をあげているもの、身体の色が白や黒かで、ご利益の内容が違う。一般によく言われるのは、猫が右手で招いているのが「お金」で、左手で招いているのは「お客」とのこと。そして白猫は商売繁盛、黒猫は病除け、ということらしい。
お店のなかで見つけた白の招き猫
右手をあげる黒い招き猫
最近では白、黒以外にさまざまな色の招き猫が登場している。金色は金運や開運、赤色は魔除け、青色は交通安全、ピンク色は良縁や恋愛にご利益があるという。地域によっても色や手の左右でご利益が違っている。
例えば京都では、黒猫は商売繁盛にご利益があり、右手をあげて招いているのは昼の商売、左手で招いているのは夜の商売にご利益ありだそうだ。また、黒い招き猫といえば、左京区川端通三条にある檀王法林寺の招き猫がよく知られている。「だんのうさん」と親しまれるこの寺の黒い招き猫は主夜神尊の御使いとされ、江戸時代から京の人々の信仰を集めてきた。その主夜神は、主夜が守夜に転じて夜を守る神として火災除け・盗難除けとして尊ばれ、夜目にも目を配ってくれるという神様だ。
古来より、夜行性で暗闇にも光る目を持つ猫は魔力があるとか、魔除けになると言われてきた。特に、夜の闇のような毛並みを持つ黒猫の神秘性が、夜を守る主夜神と結びついていったとしても不思議ではない。
寺社関連では、この檀王法林寺の招き猫が最も古いと伝わる。信仰の厚いこの招き猫が右手をあげているため、当時の京都では、右手をあげる招き猫は作るのが禁じられ、左手をあげているものしか作られなかった。右手をあげた姿が登場したのは、近代になってからだと聞く。
左手をあげる黒い招き猫
(江戸時代後期の作成と思われる)
ところで、猫がなぜ福の神になったのだろう。中国の故事に「猫洗面過耳、則客至」という一説がある。猫が顔を洗って、その手が耳より上がると客が来るという意味らしい。猫が顔を洗う動作は「おいで、おいで」と言っているようにも見えるので、見た通りの発想かもしれない。ただし、日本では猫が顔を洗うと雨が降るともいう。
招き猫は日本発祥だといわれ、人気を博したが、今では中国や香港、台湾などでもさまざまな招き猫が作られ、日本以上に大衆文化に溶け込んでいるようだ。なかでも金色に人気が集まっているようだ。お国柄の違いだろうか。
猫は日本の十二支の中に数えられていないが、招き猫に見るように、民間信仰の中には猫信仰がしっかりと根付き、時代が変わっても愛され続けている。
梅宮大社で出会った左手で招く白猫
(よく見ると後ろ足だった…)
京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。