[フォションホテル京都]にあまおうビュッフェとあま...
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新しい年を迎え、あちこちにお正月の縁起物が飾られ、京都の街は清浄で華やかな雰囲気に包まれる。お正月飾りの三種の神器といえば、「注連縄・門松・鏡餅」だろう。
なかでも門松は、年神さまを迎えるための依り代だといわれる。一般によく見られるのは、青竹を中心に据えて、その周囲に松や梅を配した飾りで、「天・地・人」をあらわすとされている。
松竹梅の門松
新年の始まりに、より強力な霊力を持つ縁起物を揃えることで、この一年をより良く、健やかに過ごしたいという人々の願いから生まれたのだろう。また、門松の風習は、山から神の依り代の松を持ち帰って門前に飾ったのが始まりで、床の間に飾ったのが生け花の始まりになったとも伝えられる。
ところで、お正月の京都の街を歩いてみると、特に、寺社や花街、旧家などでは京都特有の「根引き松」と呼ばれる門松が飾られているのをよく見かける。
根引き松
呼び名のとおり根がついたままの若い松で、枝の中程に和紙を巻き、水引が掛けられている。取材中に教えてもらった情報では、根っこを付けたままにしてあるのは「地に足のついた生活ができるように」とか、「成長し続けていけるように」といった意味があるとのことだった。
正月の代表的な縁起物のうち、注連縄は前回に紹介したので、残りの一つ、鏡餅について取材したところ、古くは鏡と餅とが反対で、「餅鏡(もちひかがみ)」と言われていたらしい。
『源氏物語』の「初音」には長寿を祝う正月の行事の中で、餅鏡が登場するが、当時は行事の後でその餅を食べるのではなく、見て安寧を祈る縁起物だったとのこと。また、古来より鏡は魔性を含むよろずの物の真の姿を映す祭祀の道具、権威を象徴する財宝として扱われ、丸い形には霊力があるとされていた。京都ではお雑煮の餅にも、「角が立たないように」という気遣いから、丸餅を食べてきた。
餅に関する縁起物としては他に、「餅花」がある。福をまねくといわれ、白や紅色に染めた餅を小さく丸めて柳の木などの枝につけたものだ。京都での歴史は浅いようだが、早く春を呼びたいという、京都の人たちの風流を愛する心から生まれた新しい縁起物だろう。お正月に市内を歩くと、花街のお茶屋さんや店先に飾られていて、紅白の花がパーッと咲いたように見え、花の少ない季節に彩りを添えている。
街で見かけた餅花
このように京都では、縁起物を飾ってお正月を迎えるということは、厄除来福をいただいて安心を得る、平安時代から続く大切な風習なのだと、取材をした年配の方たちは言う。
ただ最近では、お正月飾りをしない家庭も増えてきたというが、古来より、人々の願いや祈りがこめられ、工夫を重ねて現代にまで伝えられてきたお正月飾りには、やはり秘められたパワーがあるように思えてならない。新年の始まりを気持ちよく迎えるために、お正月飾りをし、また街を歩きながら目に留めて、この一年の新たなパワーをいただきたいものだ。
京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。