[フォションホテル京都]にあまおうビュッフェとあま...
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京都は今、新緑の季節。梅雨入り前に青もみじを追って、三尾(高雄・槇尾・栂尾)へ足を進めた。槇尾(まきのお)にある西明寺はこれまでにも何度か訪れているお気に入りの寺。凜とした山寺の風情が、格別だ。
槇尾山西明寺
寺へは参道入り口にある「指月橋」を渡る。朱塗りの橋と覆い被さってくる青もみじ、その下を流れる清滝川の清流が、幻想的な景色を演出している。
俗に、「橋はあの世とこの世を繋ぐ」と結界だと言われる。以前、橋のこちら側から向こう側へと渡るまでの間はどちらの世界にも属さない場所で、その境目にいる時、人は力が弱まるのだと教えてもらったことがある。その橋で魔に取り込まれないように、魔除けの色である朱(赤)色を橋に塗るのだという。
朱塗りの指月橋の上から青空を仰ぐと、もみじの青葉が初夏の陽射しにきらめき、吹いてくる川風に枝が揺れ、異世界へ誘われるようだ。なんだか浮遊感を感じて、不思議な心持ちになった。
朱塗りの指月橋と青もみじ
指月橋の上から青空と青もみじを仰ぐ
橋を渡ってすぐの石段を上っていくと、「大界外相」と刻まれた石柱に出合う。ここからは聖域と人間界を隔てる、もう一つの結界だ。さらに石段を登って境内へ。西明寺の歴史は古く、平安時代に空海の高弟、智泉大徳によって戒律道場として開かれたと聞く。境内には樹齢700年の槇の古木がある。
参道石段途中にある結界「大界外相」の石柱
正面が本堂で、その右手にある聖天堂に祀られる歓喜天にちなんで、赤い小さなお守りが200円で売られている。これは「倍返りのお守り」と呼ばれる。お財布に入れておき、出ていくお金に感謝すると倍になって返ってくるという。
実は昨年、このお守りを手に入れて以来ずっと、お財布にしのばせている。と、いつも出ていくばかりだったお財布に、気がつくと、お金が戻ってくるようになっていた。お金が出ていくと仕事が入ってきて、その分の収入が増えるという良いサイクルに恵まれだした、自分にとっての金運パワースポット。お守りは小銭入れにも入るサイズなので、もう一枚、手に入れようかと迷ったが、欲張ると良いことはないだろう、と慎むことに。
西明寺聖天堂の倍返りのお守り
また、境内の鐘楼では一撞き100円で梵鐘を撞かせていただける。100円で煩悩を払ってもらえるなら、と撞かせていただいた。大きく荘厳な音が響き渡り、煩悩も吹き飛んで清々しい気持ちになって聖域を後にした。
青もみじを愛でながら、渓流沿いを清滝の里まで歩くことにした。清流にしか棲まないカジカの合唱が涼しげだった。帰宅した時には昨日までの肩こりも腰痛もすっかり消えていた。連休後のストレスフルな生活の中、聖域で金運にあやかり、鐘の音に煩悩を払ってもらって、梅雨入り前にデトックス(体内浄化)してみるのも一興だ。
新緑の中、清滝川の渓流を歩く
京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。