京都にある日本最古のエレベーターが製造・輸入から1...
毎年10月1日~5日にかけて、京の秋祭のひとつ、北野天満宮の「ずいき祭」が行われる。村上天皇(946~967年)の御代・菅原道真が大宰府で彫った木像を西ノ京の神人が持ち帰って祀り、秋の収穫時に野菜や穀物を供えたのがはじまりと伝えられる。
この時期、北野天満宮の氏子地域である西ノ京の北野天満宮御旅所やその周辺では献灯がともって、露店が並び、華やかな雰囲気に包まれる。
北野天満宮御旅所
この祭の主役といえば、やはり京都市登録無形民俗文化財の「ずいき神輿」だろう。他の祭で見かける神輿とは一風、違っている。
「ずいき」とは、サトイモ(こいも)の茎のこと。神輿は西ノ京地域で収穫したズイキが屋根に葺かれ、千日紅、水稲、麦、赤ナズといった農作物などをふんだんに使っていて、手間暇をかけて手作りされている。色鮮やかな食材に覆われた神輿は独創的で、見た目のインパクトが、凄い!
ずいき神輿
すみ瓔珞(ようらく)は、
赤なす、柚子、五色唐辛子などで作られている
神輿の欄間などには人形細工が施されているが、年によって自由にテーマを設け、表現されている。昨年は、上野動物園で誕生したパンダのシャンシャンが話題を集めたからだろう、可愛いパンダの細工が施されていた。他にも注目の将棋や昔話の浦島太郎をモチーフにと、趣向が凝らされている。
昨年のずいきみこし。
桂馬や欄間には話題になったバンダが!
欄間には、こちらも話題になった将棋と棋士
その材料は髪の毛がとうもろこしのヒゲ、目は豆といったように、すべて天然の食材を使っているとのこと。4日の還幸祭の巡行を待つ間、御旅所で神輿を見ることができる。
昔から、ずいきの実であるサトイモには親芋のまわりに子芋や孫芋がたくさん付くので、子孫繁栄の縁起物として喜ばれてきた。人の「頭(かしら)」になるようにとの願いも込められる。また、サトイモは栄養と効能も幅広く、眼精疲労の回復やアンチエイジング、骨を丈夫にするなど、ありがたい食材でもある。
さて、祭のクライマックスともいえる還幸祭で神輿が巡行する時、時折、シャン、シャンと音がする。これは「いらし」と言われ、祭の保存会の方や協賛された方の家の前で、神輿を上下に揺らし、長柄の前後に付けられている金具「鳴りかん」を鳴らす。色鮮やかな神輿と鳴りかんの音色は華やかで、祭の雰囲気をいっそう盛り上げてくれる。鈴の音などの鳴り物は魔を払うといわれる。この鳴りかんも、その音色が魔を払い、場を浄めてくれると聞いている。
毎年、保存会の方たちの手によって新たに作られる、ずいき神輿。祭が仕舞って、その役目を終えた後はどうなるのか?実は解体されて、また次の年の五穀豊穣を祈願し、土に還されるそうだ。最初から最後まで、自然に優しい神輿なのだ。
五穀豊穣の秋を願い、これからも京都の秋を代表する祭事として後世に伝えてほしい。
京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。