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2020.9.1
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京を護る水の神「貴船」

「水は恐ろし 水は尊し」

京都市左京区鞍馬貴船町の山狭に鎮座する古社・貴船神社。その由緒を公式サイトで調べてみると、こんな言葉が目に飛び込んできた。「水害は恐ろしいが、水が無ければ命を繋ぐことはできない。山紫水明の京都の地に、千年以上も都が置かれたのも、この土地が豊かで美味しい水に恵まれていたからだろう。

四神相応のみやこ・京都。青龍にあたる東側には鴨川が南北に流れている。鴨川(賀茂川)の上流にある貴船神社の本宮には高龗神(たかおかみのかみ)、結社には磐長姫、奥宮に高龗神、一説には闇龗神(くらおかみのかみ)と玉依姫が祀られる。高龗神は日照りには雨を降らせ、長雨には晴天をもたらす水の神様として、古来より信仰をあつめてきた。高龗神は山上の龍神で、闇龗神は谷底暗闇の龍神といわれる。

古くは「貴船」を万物の気=エネルギーが生じる根源という意味で、「気生根」とも書いた。この地を訪れると、気力が湧いて運気が上がるといわれ、昔から参拝者が絶えない。京都は連日の猛暑で、最高気温が35度と聞けば「涼しい」と思えるほど。体力も気力もバテ気味のなか、「気生根」のエネルギーをいただきたい、と早朝の貴船を訪れた。

7月の豪雨で叡山電鉄は市原から折り返し運転をし、貴船口までは行けないため、バスを乗り継ぐ。貴船口から貴船川に添って、水音とむせかえる緑のなかを歩くこと30分。緑と朱の灯籠が美しい本宮への石段参道を上り、まず本殿に参拝した。


貴船川の清涼な流れ


貴船神社本宮の灯籠の並ぶ参道

その後、「水占い」のおみくじをひいてみた。おみくじを水に浮かべると、文字が浮き出すというもの。御神水におみくじを浸すと、文字が浮かび上がってきて、神秘的だ。浮き出たのは、「中吉」だった。大吉よりも今後の運気上昇の余地があり、いいんじゃないかと思いつつ、手順どおりにおみくじを結んで、結社へ向かう。


御神水に浮かべた水占い

結社は縁結びの御利益があるといい、平安時代の歌人、和泉式部の歌碑がある。和泉式部は夫の心を取り戻そうと貴船詣をしたことで知られる。境内には、貴船山から出てきたと伝わる長さ3.3mの天の磐船が鎮座していた。ここから、さらに結社から奥宮へ。


結社にある和泉式部の歌碑

結社にある天の磐船

奥宮は広い境内の奥に本殿が祀られている。参拝者はおらず、ひっそりとしていた。体感温度がスッと3度くらい下がったようだ。二の腕には鳥肌が立っていた。以前に「橋姫」や「鉄輪の井」の記事で紹介したが、ここが有名な丑の刻参りの舞台だ、と考えていたせいかもしれない。丑の刻参りは、藁人形を木に打ち付けて相手を呪うというが、その様子を人に見られると、成就しないそうだ。


貴船神社の奥宮

ところで、奥宮の本殿の真下には、「龍穴」があると聞く。龍穴とは気が満ちて吹き上がり、繁栄をもたらす場所とされるが、江戸時代、社殿を修理していた大工が落としたノミが突風に吹き上げられた話も残る。また、すぐ傍には船形石がある。昔、玉依姫命が水の源を求めて黄色い船に乗り、淀川・鴨川を遡って、その源流の貴船川の上流にたどりつき、水神を祀った。乗ってきた黄色い船は石で包んで人目につかぬよう隠した伝説に基づく。


奥宮にある御船形石

実は本宮→奥宮→結社の順に参拝すると良いらしい。本宮に挨拶し、奥宮で悪い縁を切ってもらい、最後に結社で良縁を結んでいただくとのこと。次回は、そのように参拝しようと思う。帰路、貴船口までバスを使わずに歩いて戻ることにした。清々しい空気と快い水音、良い汗をかいて、気生根パワーをいただいき、夏バテ気味のカラダのすみずみまで爽快になった。京都は山や水、神様に護られた都だと、あらためて感じた参拝だった。

 

今回で「京都の摩訶異探訪」の連載100回を達成、一区切りです。これまで愛読くださり、ありがとうございました。

京都の摩訶異探訪とは

京都の街のどこでも存在する伝承。それは単なる絵空事ではなく、この現代にも密やかに息づき、常に人々と共存し続けている。1200年余りの歳月をかけて生み出された、「摩訶」不思議な京都の「異」世界を、月刊誌Leafで以前「京都の魔界探訪」の連載をしていたオフィス・TOのふたりが実際にその地を訪れながら紐解いていく。。

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