【開店秘話】宮川町の天ぷら割烹[宮川町 天匠(みや...
2024年7月23日 open
「ここでは昔、祖母が[ちんみや]という家庭料理の店をやっていたんです。たんすや棚も当時のものですよ」と話す店主の平岡さん。父は店の向かいで割烹料理の名店[梨吉]を営み、母の実家は老舗料亭[鳥居本]という平岡さんが、料理人になったのはごく自然のことであった。
それでも美術系の大学に入り陶芸に没頭しながら別の角度で料理の世界を見つめるなど、独自の道で料理人として歩み始めたそう。
「卒業後は東京に出て料理の世界で修業していました。でも父からこの建物を手放すという連絡があって。思い入れのあるこの場所を失いたくなくて自分が受け継ごうと、妻と娘を東京に残して京都に帰ってきました」。
平岡さんが目指すのは本格的な和食の文化を継承しつつも、自分ならではの工夫を凝らした創作和食だ。それでも使うのは父と同じダシで、比叡山系の超軟水の地下水で丁寧に取っている。
「店のテーマは『香りと出汁』で、味覚や嗅覚と結びつき記憶に残るような料理が作れたらと思っています。ダシは父が料理を作るうえで何より大切にしてきたものでもあり、自分の舌をつくってくれたもの。やっぱり自分の料理のベースなんですよね」。
料理は月替わりのリーズナブルなコースが基本。食材ありきではなく毎月コンセプトを決めてから、コースの構成を考えていくそう。頭の中は常に新しいアイデアでいっぱいなのだとか。遅い時間からはアラカルトを楽しむことができるのも嬉しい。
「今後は自分が生まれ育った祇園の街を盛り上げていきたいという想いもあります。実は開店直前に交通事故で重傷を負ってしまい、家族を始めたくさんの人に支えてもらった。感謝の気持ちも込めて店に立ちたいです」。
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