【滋賀の酒蔵を訪ねる①】[平井商店]/大津
日本一の湖・琵琶湖を中心に平野部が広がり、その周りの山々からの伏流水が今でも多くの酒蔵の仕込み水となっている滋賀。個性豊かな酒蔵と日本酒造りへの思いに注目する。第13回目は米から酒まで、すべてをこ自身の手で作り、作り手の想いを注ぎ込む東近江市の[畑酒造]をたずねた。
太郎坊宮が鎮座する赤神山の麓に広がる田園風景。秋、稲穂が頭をもたげるのは[畑酒造]四代目畑大治郎さんの酒米・吟吹雪だ。
1914年にこの地に創業し、100年を超える歴史を紡ぐ[畑酒造]。「『つぼいり』と言いますが、量り売りで店頭で立ち飲みができる『受け酒屋』で始まった造り酒屋だと聞いています」と話してくれた畑さん。大正時代に酒造りを始め、代表酒「㐂量能(きりょうよし)」を世に送り出したのが初代・畑大治郎。そして、同じ名前の四代目が1999年に立ち上げた新ブランドが、その名も「大治郎」だ。
「私の名前は、初代が35歳くらいで若くして亡くなっていて、その分長生きするようにと、祖母がつけてくれたそうです。酒の名前は、エチケットの文字も書いてくださっているお寺のご住職がこの名前がいいんじゃないかって言ってくださったんです」。力強い筆文字から、創業者の心意気と、それを受け継いできた蔵の歴史が伝わってくる。
周囲に導かれるようにして、蘇った大治郎の名。この酒に込められているのは、代々この地で作られてきた米への想いだ。
「『大治郎』を造ったきっかけは、『自分が作ったお米のお酒を飲みたい』という農家の方からお話をいただいたことです。それまでは、酒造組合に依頼して酒米を購入していて、だいたいの生産地は分かるものの生産者までは知りませんでした。生産者が見える米で初めて仕込んだ酒ならば、新ブランドで出そうと考えました」。
というのも、この「大治郎」を立ち上げた1999年頃は、酒造りをやるか、やめるかの選択に迫られるほど、経営的に厳しい時期だった。酒蔵の将来をかけた勝負を、創業者と自身の名を冠したこの「大治郎」に託したのだ。「うちは昔から地域の人たちに直接販売するのが主でした。しかし量販店やディスカウントストアが出来てきて、お酒の買い方が変わってしまったんですね。販売が落ち込み、このままでは…という状況で、最後の一手という気持ちで始めたのが「大治郎」です。幸いにも受け入れていただく酒販店さんがあって今に至ります」。
契約農家との酒造りは畑さんの気持ちにも変化をもたらした。
「誰がどうやって作った米かを知っていることは大きなことでした。田植えするところからずっと見てきた米ですからね。酒造りにも一層気持ちが入ります」。
さらなる転機は2010年。
畑さん自身が米作りも始めたのだ。「うちの田んぼを貸していた農家の方がやめることになって、それなら自分でやってみようと。少しずつ量を増やして今では2.5ヘクタールほどになりました。全量酒米の吟吹雪です。今はその自営田と近くの契約農家の米とで酒を造っています」。
そして杜氏として酒造りを主導することになったのも2010年だった。
「大治郎を始めたときから能登から来てもらっていた杜氏が高齢で、当初から10年で覚えてくれと言われていたんです。それで交代したのもその頃でした」。
米を作り、杜氏として酒造りにも携わるようになって十数年が経った。
「いろいろな苦労がものづくりにはあると日々実感しています。酒造りは毎年が一年生。年に一回しかチャンスがない。50年のベテランでも、50回しか酒造りしていないんです。米作りも同じです」。尽きることのない試行錯誤。「なかなか大変」と言いつつ、畑さんは「楽しい」とも言う。
「大変さのなかにも面白味がある、面白味が勝ってるから、今こうやってできてるんかなと思います」。
その面白味の源は?「それはやっぱり飲んでもらった方から美味しかったよとお声をもらうことでしょうね。きっと最初に自分が作った米でできた酒を飲みたいと言った人もそうだったんだと思います。自分が作ったものが加工されて酒になって。それを美味しく飲むのを楽しみに仕事をする。やっぱり大変な仕事なんで、楽しくしたいっていうのもあったんじゃないかな」。
春に田植えをし、夏には雨の心配をしながらひたすら草刈り。そしてようやく秋に収穫を迎えて、いよいよ酒造りシーズンである冬がやってくる。東近江の四季を味わう酒が届く頃、きっとまた次の田植えのことが畑さんの頭をよぎるだろう。
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[大崎商店] 075-601-013/京都府京都市伏見区三栖半町479
[地酒とワインの専門店 マルマン]0774-52-3582/京都府城陽市寺田北山田92-4
[西本酒店]075-221-0452/京都府京都府京都市中京区宮木町480
[菊屋] 075-981-0553/ 京都府八幡市男山竹園2-1 A3-109
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