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2024.9.1
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『あらしのよるに』会見01

左:中村壱太郎、右:中村獅童

大ヒット作!歌舞伎『あらしのよるに』が初演の地[南座]で9年振りに2024年9月4日(水)から中村獅童と中村壱太郎で再演決定

今年、発刊30周年を迎えるロングセラー絵本『あらしのよるに』(講談社刊)は、続編を含めた累計発行部数が350万部を超えるベストセラーシリーズ。狼だけど気のいい「がぶ」と、愛らしくも芯の強い山羊の「めい」がお互いの立場をこえて友情を深め、相手を思いやる美しい心を描く物語。この絵本を原作にした歌舞伎『あらしのよるに』が2015年9月に[南座]で上演され、狼と山羊の迫力満点の立廻りや圧巻の群舞、義太夫や長唄など、歌舞伎ならではの演出や技法を随所に取り入れた舞台は大きな話題となった。

あらしのよる

「平成30年11月博多座」Ⓒ松竹

今年8月に大阪で行われた会見で「がぶ」を演じる獅童は「初演を9年前に[南座]で行いまして、再演、再々演と続き、また9年ぶりに初演の地・京都に戻ってくることができて非常に嬉しく思っております」と喜び、「めい」役の壱太郎は「今回、『あらしのよるに』に初めて参加させていただきます。初演があった9年前に[南座]で拝見したことを覚えています。めい役は松也さんがずっと演じて大切にされてこられた役ですので、その思いを大切に『あらしのよるに』の世界を存分に楽しんで演じたいと思っております」と意気込みを語った。

獅童にとって、「新作歌舞伎を1から作るのは初めての経験」でもあるこの作品。「古典好きなお客様が多い京都ではたしてこの芝居が受け入れていただけるのかどうかと不安のあるなかでやらせていただいた。当時、若い方たちの反応を見てみたいと、学生さんの団体を入れてもらったのですが、最後、総立ちのカーテンコールに。松也くんと『この芝居、もしかしたらいけるかもしれない』と話していたのを鮮明に覚えています。次の週ぐらいからは札止め(完売)にもなり、支配人が楽屋に『札止めになりました!』って駆け込んできたほど(笑)。南座さんもそうですし、床山さん、衣裳さん、みんなの気持ちが1つになれたことが成功につながったのかなと思いますし、私の母の思いが詰まっていることが共演者の皆さんにも伝わり、さらに気持ちが1つになれたのかなと思います」と思いを噛み締めていた。

『あらしのよるに』会見

「母の思い」とは、「お袋とこれをいつかやれたらいいなと話していた」のだが、2013年に母が他界。しかし、実は他界する10年ほど前に、手書きの企画書を書いて「いつか獅童が何かやれるような時が来たらこれをやらせてやってくれ」と松竹に渡していたのだという。

「昔若い頃、『顔見世』に来させていただいても、本当に出番が15分ぐらいで終わって、ずっと並んでいるだけの役も多かったんです。母が観に来ると、自分もちょっとふてくされるというか子どもっぽいんでしょうね、へそを曲げるわけではないですが、夢を諦めかけるというか、ダメなのかなという気持ちになる時もあったんです。そんな時に母は『あなたは自分を信じなさい。必ずあなたはできるから』という置き手紙をしてくれた。それも[南座]だった」と[南座]での母との思い出も話してくれた。

そんな獅童も2児の父。自分の子ども達にも「信じる力は普遍的なテーマですから、伝えていきたいと思える作品」で、「1人でも多くの子どもたちやお父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃん、広い世代の方たち皆さんに観ていただきたいと思いますね。小さい子どもがいるからなかなか歌舞伎を観にはいけないんですよって言う親御さんも多いと思うんですけど、ぜひ子連れで来ていただいて思い出作りをしてもらいたい。[南座]の初演の時に親子で笑って泣いている光景を目の当たりにすると本当にやってよかったと思った」と、子どもと一緒に観劇してほしい作品でもあるとコメントした。

あらしのよる会見03

今回のバディとなる壱太郎に、獅童が「松也くんが『俺がいないのにやるのか。でもまた僕がこの役をやりますから』って言ってたけど、どうする?(笑)」とイタズラっぽく尋ね、顔を見合わせて笑い合う場面も。物語のがぶとめいのように信頼関係がぐっと深まっていきそうだ。

壱太郎は、“平成世代の歌舞伎俳優”の中でもますます磨きがかかり、幅広い活躍を見せている俳優だが、「この作品を観た時、獅童さんがおっしゃっていたように劇場で子どもたちが笑っていて、ある意味、すごく衝撃的だったんです。古典の作品は中高年の方でも難しいことが多いのに、小学生が普通に楽しんで観ている姿を見て、こういうことがあるんだと感じたことをとても覚えています」と感動を受けた舞台だったことを語った。

改めて原作の絵本を読んだという壱太郎は「狼と山羊だから絶対に友情はないと言うと、もうそれで物語は終わり。これは絵本の中だからだけじゃなく、勝手な先入観だとか、勝手な思い込みだとか、普通に生活しててもある凝り固まってしまったものを、ニュートラルにまっすぐに考えさせてくれる作品」と感慨深げ。「とにかく大切な友達で、理由があるからではなく、『もうただそれだけなんだ!』っていう思いが、本当にまっすぐ伝わってきました。絵本と歌舞伎の台本は少し違いますが、最初に感じた思いを大事にしたいと、今回演じる上で思っています」と真摯に向き合う姿を見せた。

狼だけど気のいい「がぶ」(中村獅童)と、愛らしくも芯の強い山羊の「めい」(中村壱太郎)との秘密の友情を描いた感動作。乱暴そうな狼が見せる相手を思いやる気持ち、軟弱に見える山羊が伝える相手へのまっすぐな想いに、いつの間にか涙が頬を伝う、心が温まる物語。観終わった後、誰かを思いやる気持ちが溢れ出すこの物語を[南座]で体感してみて。

九月花形歌舞伎『あらしのよるに』

  • くがつはながたかぶき『あらしのよるに』
  • 京都府京都市東山区四条大橋東詰
  • 京阪「祇園四条駅」6番出口から徒歩すぐ
  • Tel.075-561-1155(南座・販売営業まで)
  • 2024年9月4日(水)~26日(木) 昼の部/11:00~、夜の部/16:00~
  • 休演/9月9日(月)、17日(火)
  • 料金/一等席1万3000円、二等席8000円、三等席4000円、特別席1万4000円
  • https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/play/864
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