京都にある日本最古のエレベーターが製造・輸入から1...
Made in Kyoto=「京もの」。京都の伝統あるものを継続しながら、新しいことに挑戦し老舗として100年以上の歴史を築いている。時代が変わっても続けるべきもの、時代が変わったからこそ生まれたものには、それぞれストーリーがある。
京都のお寺や美術館などを巡ると、美しい色彩の日本画に出合うことが多々ある。日本画は、日本の伝統的な画材と技法により描かれた絵画だ。画材は天然のもので作られ、絵の具も自然界にある素材を使い、高い技術をもって作られてきたという。襖絵や浮世絵にも使われてきた、とても貴重な絵の具。「ぬくもりと職人の五感」を大切にしたい想いから、今も手作業で作り続けているのが、最古の絵の具店として知られている[上羽絵惣]。
始まりは、宝暦元(1751)年。初代、ゑのぐや惣兵衛が創業し、日本画で重要な白い絵具の胡粉から、天然岩などの色絵具を販売していた。そこから、明治時代には角容器に入れた顔彩を考案し、日本画用絵具の専門店として揺るがない存在へ。そして、原料が手に入りにくくなった天然岩絵具よりも、安定的に製造できて時代に合った新彩岩絵具などが九代目によって考案された。
現在は、プロの日本画家の使用する岩絵具を中心に、水干絵具、棒絵具など1200色の日本の色を展開、約700点の画材を提供し、能面師や人形師などにも愛用されている。そして、平成元(1989)年からは十代目が暖簾を守っている。
初代のゑのぐや惣兵衛が、現在の地で最初に取り掛かったのは胡粉業だった。それ以来、白狐がトレードマークの胡粉は、上質な白い絵具と知られている。しかしながら、日本画を描く画家や伝統の和の色を使う人が減ったこと。そして何よりも絵具を作る職人が高年齢化し減っていることも深刻な問題に。例えば、水銀を焼いて作る色・古代朱の絵具は、誰も作ることができなくなり廃番になっている。
このままでは、和の色が失われていく、家業の存続にも関わると、絵具などを使い何かできないかと考える中、ある時ラジオで「ニオイのしないホタテ塗料」の話を聞き、ホタテの貝殻=天然素材の胡粉を使いネイルカラーができるのでは?と、考案されたのが「胡粉ネイル」だ。合成樹脂に着色し、それを有機溶剤で溶いた一般的なネイルカラーと違い、独特の刺激臭がないのも特徴のひとつだった。
[上羽絵惣]の胡粉ネイルは、2010年に発売。水溶性で、人にやさしいことをコンセプトに展開し、発色が良いだけでなく、乾きが早く上品な仕上がり。また除光液を使わず、手指除菌に使う消毒アルコールで落とすことができる上、専用のラベンダーの香りがするオーガニック除去液もあるので、爪が弱い人でも使えて、病気療養中の人にもファンが多いという。
2016年には、今までの胡粉ネイルと比べて、よりネイルカラーが落としやすい新シリーズ「輝かシリーズ」を販売。これは、入浴時にネイル被膜を剥がせるのでOne Day Nailと呼ばれ、パーティなどこの日だけネイルをしたい人々に重宝されている。現在、カラーラインナップは40色以上。他に、年に2度、春夏と秋冬の限定カラー各3色を発売している。
胡粉ネイルが発売されて以降、人にやさしいコスメなどを人々が求めていると実感し、再び色を楽しめる新しい商品を考えることに。実は、[上羽絵惣]には女性スタッフがたくさん在籍している。その存在が、商品開発をする上でとても重要で、使うことを考えたさまざまな意見が、商品の企画や試作に活かされているという。そうして出来上がったのが、胡粉コスメ。2019年に販売された、京の花をイメージした6色展開の口紅、京花舞だ。
その後は、胡粉ネイルが映える美しい手を意識した、京都産の成分にこだわった薬用ハンドジュレ瑞々を販売し、2021年には国産ゆず成分配合の爪美容液、指先ウォータリングジェル。そして、2023年には薔薇の香りの爪美容液、指先ウォータリングジェルが登場している。
最近では、ネイルアートやグラデーションなど胡粉ネイルの楽しみ方を発信する[上羽絵惣]。今までは、卸専門で販売をしてきたこともあり、購入する人々が身近ではなく、実店舗となる本店以外での直接の販売は行っていなかった。
しかし、時代の波とファンの声もあり、2023年秋に自社ECサイトをリニューアル。商品の紹介や読み物を充実させ、絵具の取り扱い商品も大幅に増えた。
日本の色を大切にすること。その色の美しさを爪先から感じて身近に思えることは、今まで歴史を紡いできた職人へのリスペクトに繋がる。何より美しい和の色を身につける機会をぜひ楽しんでほしい。
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