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Made in Kyotoの「和菓子」。京都には季節を知る和菓子や、その時々の歳時や年中行事にまつわるお菓子がある。美味しく味わいながら、京都のいま(その時季)を感じることができる甘いものの魅力とその背景を少し深く紹介する。
亥の子の日にいただく和菓子として知られている「亥の子餅」。その名のとおり猪の子ども、ウリ坊のようなコロンとかわいい形をした餅菓子だ。
歴史を紐解けば、平安時代からの宮中の歳時記として「玄猪」があった。15代川端道喜著の「和菓子の京都(岩波新書)」によると、10月玄著の丸餅に対して、11月の霜月玄著では、碁石ほどの赤・白・黒の三色の小餅を、御所御用の川端道喜が作り、天皇が民の平穏を祈る儀式(おつくつく)として餅をつく所作をし、添え花とともにお守り(特に旅のお守り)として下賜されたとのこと。これが、長い時代を経てお菓子へと発展していく。
平安時代の宮中の年中行事、亥子餅の儀式を再現した『亥子祭(いのこさい)』が毎年11月1日に開催されている。
桓武天皇に平安京遷都を進言、都の造営に貢献した貴族の和気清麻呂(わけのきよまろ)を主祭神とする神社だからこその特殊な神事。
あずきの赤、栗の白、ごまの黒で3種類の餅をつく儀式の後、当時と同じ菊の花、イチョウ、紅葉(カエデ)の添え花に、忍草をつけて、平安装束の一行が[京都御所]へお餅の献上に行く。神社に戻ったら亥の子餅が一般の参拝者にも振る舞われるのも人気で、無病息災を祈願されている。
[護王神社]では、おみやげに3個入りの亥の子餅1500円(税込)を販売しているが、それが[鶴屋吉信]の亥の子餅だ。
銅鍋を使い、お餅と餡を練り込むように炊き上げた胡麻入りの餅生地でこし餡を包む、あんこ好きには堪らない餅菓子。
[鶴屋吉信]の餡は、同じ産地でも天候などによって風味や歯触り、色味が異なるため、毎年現地の小豆畑に担当者が赴いて見極め、良い産地の小豆をセレクト。小豆、餡をひとつとってもこだわりがある。
宮中の行事「玄猪」にまつわることとして、そもそもは旧暦10月の亥の日にお餅を食べると無病息災になるという中国の風習があったそう。亥の日の「亥」が、子だくさんのイノシシということから子孫繁栄を祈るものであるという捉え方もあるのだとか。
また、茶道の世界では、5月から10月まで閉じていた、湯を沸かす「炉」に火を入れる、11月の「炉開き」があること。亥は、陰陽五行で水を意味し、水は火を制することから、亥の月、亥の日に囲炉裏や炬燵に火を入れると火事にならないと、庶民に信じられていたことなど。寒くなる前に体を大切にすることを、今一度考えましょうという教えを説いているように思う。
毎年変わるが、2023年は新暦だと11月1日(水)。旧暦で11月13日(月)。[鶴屋吉信]の本店では、11月1日から末日まで亥の子餅を販売し、2Fの茶房ではお抹茶とともに味わうことができる。
水無月や柏餅のように、似通ったスタイルではないのも特徴で、店ごとにさまざまな亥の子餅が登場するので、お好きな亥の子餅を温かいお茶とともに味わおう。
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